なぜ公務員は前例踏襲が好きなのか◆現役公務員談

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公務員として仕事をしていると、かならず前例踏襲的な仕事をする場面があります。なぜ公務員は、前例踏襲してしまうのか。現役公務員として「前例踏襲」について解説します。

前例踏襲とは

「ぜんれいとうしゅう」と読みます。過去のやり方にならって、同じ方法で業務を進めることですが、過去のやり方を妄信して、脱却できないという意味で、悪い意味で使われることがあります。

前例踏襲は、悪いことなのか。

公務員の仕事の多くは、法律などのルールに従って行われることが多くあります。
最新のルールを確認して、そのルールの範囲の中で、もっとも効率的なやり方を考えて業務を進める「べき」、という考え方に立つと、単純に前回のやり方に従って、最新のルールや効率性を考えずに思考停止で仕事を進めてしまうという状況が、批判されるんだと思います。

でも、現実として、なんでもかんでも、やる「べき」やり方をしていたのでは、時間がいくらあっても足りません。逆に非効率です。

国の法律は、割とよく変わりますし、この法律は読みにくくてしょうがないし、法律の詳しい運用が示されるのは、かなり後になったり、法律ではない国の通知で色々なルールが決まっている場合があるし、いちいち全部確認していたら、非効率でしょうがないです。

だいたい、細かな仕事まで、効率性をいちいち考えることが、既に非効率だと感じます。

私は、前例踏襲が必ずしも悪いものだと思いません。
仕事のレベルを考えて、多少間違っても良いものは、前例踏襲でちゃっちゃと終わらせてしまって、本当に考えたほうが良い仕事に時間を割いた方がよほど効率的だと思っています。

「多少間違ってもいい」という考え方は、なかなか役所の中では通じませんが・・・^^;
「役所は間違ってはならない」という前提があるんでしょうね。

役所が間違うとどうなるか?

役所の仕事でミスがあると、ここぞとばかりに批判する人がたくさんいます。
間違い探しをするために、市役所の中をウロウロしている、意識の高い市民の方もいます。間違いを見つけて、嫌味をいう上司も、たくさんいらっしゃいます。
こういう方に見つかると、多くの時間を浪費してしまいます。中には、精神的に追い詰められる人もいます。

また、簡易なミスを定期的な監査で見つかると、「指摘」を受けることになり、なぜ間違えたのか、原因と対策をしっかり文章にしなくちゃいけません。そして、このミスの内容と原因と対策が公表されます。

なので、役所の中では、ミスに過剰反応します。

よくあるミスは、日付の前後関係のつじつまが合わない。というやつです。書類を処理する順番どおりの日付になるはずが逆転したり、空欄になってしまっていたり、という状況です。

公務員も人間なので、当然、ミスすることはあります。細かなミスまでなくすためには、多くの労力を割かなければなりません。

私は、「この業務なら、多少間違っても、監査にごめんなさいって謝ればいいだけだから、細かく調べなくてもいいよ。指摘されたときに考えよ」というスタンスで仕事をしてしまうことがあります。監査の人には聞かせられませんが、このぐらいの感覚で仕事をしないと、職員が疲弊します。
でも、中には、間違うと、そのリカバリーにとんでもない労力がかかる場合がありますので、それは気をつけますが。

なぜ、公務員は前例踏襲が好きなのか?

公務員は、何か仕事をするときに、かならず確認したがるのは、「前例」や「事例」です。
なぜ、そんなに前例や事例を探してしまうのか。それは、自分の選んだやり方が妥当なのかを確かめるためです。
やり方の妥当性を確認するときに、前例や事例があると安心するからです。

「説明責任」という言葉があります。
公務員には、なぜそのやり方をしたのか、説明責任を果たさなくてはならない、という強迫観念があります。
感覚的に、「こっちの方がいいって何かに書いてあったから」「なんとなく、こっちが良さそうだと思って」というのでは、バカ扱いをされます。バカ扱いされるだけで仕事が進むならいいのですが、「きちんと調べてこい」ということで、ほぼ確実にやり直しになります。何事にも根拠が求められます。

この根拠として、もっとも確からしく見えるのが、「前例」です。
「前回このやり方でやって問題ないので、今回も同様のやり方でしようと思います」と言われると、なんか安心しませんか?
その安心を得るために「前例踏襲」が好きになるのです。

前例踏襲とうまく付き合う

思考停止パターンの前例踏襲も役所の中にはよくあります。
窓口で「前例がないからできません」という応対になってしまう場合です。これでは、相手が怒って当然ですね。

他にも、せっかくのチャンスなのに前例踏襲かよ、というパターンです。
ある程度の仕事を任せられたのに、「前と同じでやっときました」という場合です。残念で仕方ないです。

悪い前例踏襲ばかりでなく、大量の業務をこなしていくために、前と同じやり方で仕事を進める。というのは、当然必要です。

前例踏襲も立派な仕事の進め方の一つです。
頭を使って前例に頼らず工夫して仕事をする場面と、時間を節約して前例踏襲でさっさと終わらせる仕事をする場面とを、うまく使い分けたら、きっと良い仕事ができると思います。

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