組織で働いていると理不尽な仕事を押し付けられることがあります。
組織の中で20年以上働いてきた経験から、理不尽な仕事に対応する心構えをお伝えします。
理不尽な仕事の例
この記事を読んでいただいている方の中には、組織の中で仕事をしていて、下記のような「理不尽な仕事」を押し付けられた経験があるのではないでしょうか?
偏った業務分担
なぜ、自分ばかり仕事が多いのか、やりにくい仕事ばかり回ってくるのか、などなど。
組織で仕事をしてるんだから、嫌な仕事はみんなで回せばいいのに、「経験のある人の方がスムーズに仕事ができる」とか言うもっともらしい理由で、誰もやりたがらない仕事が回ってくるという経験はないでしょうか。
経験者を増やさなければ、いつまで経っても自分が対応する羽目になります。
こんな理不尽な仕事の振られ方、よくあるのではないでしょうか。
関係性の低い会議への出席
通常、会議をする目的は、会議の中で議論したり、何かを決定したり、次に進むためのステップのはずなので、議題に関係があるメンバーを集めればいいのに、やたらと幅広く集められる場合があります。
どんな意見が出てもその場で話ができるように、とか、会議で情報共有をするために、などの理由のようですが、ほとんどの場合は、出席しても眠くなるばかりです。
そんな会議の議事録には、何も発言しない方が出席者が大勢列挙されています。
情報共有なら、あとで議事録を読めばいいだけではないかと感じます。
こんな、理不尽な会議、よくあるのではないでしょうか。
いつ使うか分からない資料作り
通常、資料を作るのは、何か目的があって、作るものです。
「〇〇会議で〇〇を決めるため」「〇〇についてお知らせするため」「稟議文書の〇〇を裏付けるため」などなど。
でも、中には、何に使うのか、誰に見せるのかよく分からないままで、資料作成を指示される場合があります。または、定期的に作っているからという理由だけで、資料を作らされる場合があります。
ただ資料を作って、上司に見せて、書類棚に収納するだけ。きっとこんな運命をたどります。
こんな、理不尽な資料作り、よくあるのではないでしょうか。
理不尽な仕事に巡り合ったときの感情
この記事では、理不尽な仕事に遭遇したときに、どのような心構えで対応するのかをお伝えしようと考えていますが、対応する心構えの前に、まず、理不尽な仕事を押し付けられたとき、どのように感じてしまうのかを理解してみましょう。
怒り、不満
なぜ自分ばかり、不公平だ、などの怒りや不満の感情が巻き起こると思います。
その怒りや不満は、同僚や知人に対するグチを言いたくなってしまいます。
また、怒りや不満の原因となっている当事者に対する批判や文句になって、直接的に抗議したくなる感情も起きてしまいます。
無力感、空虚感、モチベーション低下
無駄な仕事を押し付けられていると感じた場合には、無力感等からモチベーションの低下を招くことにもなると思います。
形式だけの生産性のない仕事をさせられると、仕事全般へのやる気のなさにつながっていくことも考えられます。
ストレス、不安
押し付けられた仕事から逃れられないという状況に、ストレスや不安を感じる場面もあると思います。
ストレスや不安を抱えたままの状態で過ごすと、心身の不調につながることも考えられます。
感情的な行動、無理な我慢はやめましょう
このような感情をもとにして、抗議や不満をストレートに表すような感情的な行動をしたり、自分の中で抱えて我慢し続けてしまう、ということになれば、結局、損するのは自分ということになると考えます。
次の項目で、理不尽な仕事の押し付けに、感情的にならず、かつ過度に我慢せずに対応するために、私がお勧めする心構えをご説明します。
理不尽な仕事に対応する心構え
基本的な心構えを一言で言うと、「気楽に、図太く」です。
- 許容できる範囲は、「気楽に」対応できるか考える。
- 許容できない範囲は、相手の立場を尊重しながらも、「図太く」断る。
以下、詳しく説明します。
許容できる範囲は、気楽に対応できるか考える。
仕事を振った側も、多少申し訳ないとか、理不尽かなと思いながら仕事を振っている場合があります。
自分の時間的余裕と精神的余裕を考えて、「この程度のことなら、引き受けても大丈夫かな」と思えれば、理不尽な仕事でも引き受けて良いのではないかと思います。
仕事を振られた直後に「そんな理不尽な仕事はしたくないので、断ります」と、いきなりバッサリ断るというのは、私は、お勧めしません。
仕事というのは、人間関係で成り立っている部分が多いと思います。仕事を振ってきた人は、今までの人間関係を考えて、あなたを選んでいると思います。理不尽とは言え、あなたを選んでいるという見方もできます。
また、組織内で仕事を続けていくならば、その相手とは、今後も仕事上の関係性が継続する可能性があります。あるいは、人事異動で逆の立場になり、自分自身が理不尽なやり方だと思いながら、他者に仕事を振らなければならないということもあり得ます。
時間的余裕と精神的余裕があるのか考えてみて、余裕があるのであれば、その理不尽な仕事を引き受けても良いのではないかと考えます。
引き受けると決めたならば、「気軽に」引き受けたほうが良いと思います。「本当はしたくないけど、しょうがないからいいよ」というしぶしぶ引き受けたのでは、理不尽な仕事をする上に、相手との人間関係も悪くするという、自分にとって良いことは何もないという結果になることも考えられます。
許容できない範囲は、相手の立場を尊重しながらも、図太く断る。
依頼された理不尽な仕事を許容できない、断りたいと感じる場合があると思います。
例えば、
- 他の仕事が忙しくて時間的余裕がない
- 家庭の事情で残業してまで仕事をたくさん抱える時間的余裕がない
- 今回の理不尽な仕事の振られ方は精神的に我慢できない
- 一度引き受けた仕事ではあるが、これ以上理不尽な仕事を続けると精神的に許容できない
というような状況です。
許容できないと感じたならば、曖昧にせずに「図太く」断ったほうが良いと思います。
時間的余裕がない場合には、断りやすいと思います。他の仕事と重複しているというような場合です。
理解しやすい理由まではっきり伝えて断ることができるからです。
精神的余裕がない場合には、断りにくいと思います。でも自分の精神面まで犠牲にして、理不尽と感じる仕事を引き受ける必要はないと思います。
そういう場合には、理由まで伝えずに、「申し訳ないが、引き受けることができない」と誠意をもって断ればよいと思います。
また、仕事を依頼する側も理不尽と分かっている場合に、断りにくい雰囲気を作って、依頼していくる場合があります。
引き受けやすい内容だけを先に話しておいて、「〇〇の部分は、こちらで対応するつもりだけど、場合によっては、ここまでお願いするかもしれない。」という含みを持たせておいて、後になって、「〇〇の部分をこちらで対応できなくなった、申し訳ないけど対応してほしい」というような具合です。
これは、断りにくい雰囲気を作るテクニックのようなものです。
「一旦引き受けたならば、対応しないと申し訳ない」という責任感を感じるかもしれませんが、「そこまでは出来ないので、申し訳ないが断ります」と図太く断ることを意識した方が良いと思います。
その仕事の責任は、あなたではなく、依頼元にあるはずです。責任を感じる必要はないと思います。
断り難いときの伝え方
言われてすぐに断り難い場合には、「少し考えるが、対応は難しいかもしれない」と一旦間をおいて、数時間又は1日程度の間を置いてから、「申し訳ないが、〇〇の部分までは対応できない」と断ればよいと思います。
依頼された途端に、キッパリと「その仕事は、自分はできません」と断るのは、潔く見える気もしますが、あまりお勧めではありません。相手の立場を尊重していないと感じるからです。
少しは検討したが、申し訳ないが、断らしてもらう。
という考え方で伝えれば、相手の立場も尊重した断り方になるのではないでしょうか。
伝えるときには、誠意をもって、かつ、あまりへりくだらずに、「申し訳ないが、引き受けることはできない」と断ればよいのではないかと思います。
理不尽であることを相手に伝えるために
理不尽な仕事を引き受けるにしても、断るにしても、依頼元に理不尽な内容であることを伝えるかどうか、迷うところです。
ただ単に苦情・文句を言っているだけと捉えられては、言う意味がありません。
特に、「我慢ならないから、苦情を言ってやる」と意気込むのは、ただのクレームになってしまいます。
皆さんも経験があると思いますが、クレーマーの意見が尊重されることは、まずありません。基本的に、その場限りの対応をして、スルーされます。
私は、基本的には、依頼元に対して、理不尽な仕事であることを伝える必要はないと思っています。伝えるからには、改善して欲しいと思いながら伝えますが、なかなか改善されるものではありません。
それどころか、どんなに丁寧に伝えても、ただの文句に聞こえてしまうということもあります。
それでも、依頼元に伝えたいならば、私の場合は、理不尽な仕事であることを少し実証したうえで、伝えてるようにしています。
例えば、
- 理不尽な仕事の割り振りだったとしても、何回か対応するが、それ以上は、「この仕事の割り振りは、どうしても理不尽に感じるので、申し訳ないが、断らしてもらいます」と伝える。
- 関係性の低い会議への出席を依頼され、何回か出席するが、それ以上は、「何度か出席したが、発言することもないし、内容を把握するだけなら議事録で十分。他の仕事に時間を使いたいので、申し訳ないが、出席依頼をやめてほしい」と伝える。
- いつ使うか分からない資料作りであれば、少し作成してみて、「手を付けてみたが、作成目的が理解できていないので、上手くまとめることができない。資料作成の必要性が明確になってから作った方が良いと思うので、申し訳ないが、今回の資料作りは、なしにしてほしい」と伝える。
このような、伝え方をしています。
せっかくならば、建設的な意見になるように伝えれば、その伝えること自体が仕事になると思います。
私が経験した一つの事例と対応
組織の中で長く仕事をしてきたので、数々の理不尽と感じる仕事がありましたが、その中の一つの事例をご紹介します。
「担当でもないのに、休日を犠牲にして働く仕事が固定化される」という事例です。
理不尽な仕事の内容
あるとき、休日イベント的な業務の人手が不足したようで、「人が足りないから協力してほしい」と言われて、困っているなら協力しようと思い、引き受けることにしました。
業務内容は、普段の担当業務とは違う内容で、なかなかハードでしたが、まあ誰かがやらないと困るだろうからと割り切って、業務を終わらせました。
ところが、しばらくして、同様の休日イベント的な業務が発生すると、また役割が回ってきました。「え、またするの?ほかに人はいないの?」と言っても、経験者に頼りたいと言われて、渋々引き受けました。
その後、同様の仕事が発生すると、かならず役割が回ってくるようになりました。どうやら、その仕事は、後任者を見つけないと辞めてはダメという暗黙のルールがあるようでした。
しばらくすると、その暗黙ルールが仕組化されて、エクセル管理になりました。
その仕事が発生するたびに、エクセル入力をうながされ、
- ○月○日に出勤できるか○または×をつける
- ×ならば代理の人を記入すること。
- 代理の人は自分で見つけること。×をつけるだけではダメ
という仕組みです。
休日に別の用事があって、代理の人が見つからない場合は、犠牲になれということ?
休日出勤する人を、組織的に決めるのではなく、自己責任で決めろということ?
困っているなら協力しようと思って協力したのに、この強制の仕方は、ないんじゃない?
他の人のやり方を見ていると、同じ学校の先輩後輩とか、職場の上司部下という関係性を使って、後任者を見つけているようです。
引き受けた人は、一度受けると抜けれなくなるからやりたくないけど、先輩から言われたらしょうがない。という断り難い状況で後任者になった人が多い印象でした。
やりたくてやっている人は、皆無ではないかと感じます。
私の対応
一応、ルールに従って、組織内の仕事上の関係がある方に、後任者になってくれるか、何人か打診しました。先輩後輩とか、上司部下など、強制的な感じではなく、「もしする気があるならば」という断りやすい尋ね方で打診しました。
思っていた通り、だれも後任者になりたい人はいませんでした。皆が口をそろえて言うのは「一度引き受けると、抜けれなくなるので、引き受けたくない」という理由です。
ルールが邪魔をして、協力者が見つからないという負のループになっているようです。
これ以上探しても無駄だと思ったので、その仕事を担当している部署に、以下のように伝え、休日業務を断りました。
「ルールに沿って、打診したが、誰も後任者になる人は見つからなかった。どうやら後任者を自分で見つけるというルールが嫌で引き受けたくない、という理由のようだ。わたしは、後任者を押し付ける強制をすることはできない。後任者を見つけることができなくて申し訳ないが、自分も次の休日イベントの日は用事があって、協力できない。担当部署で後任者を見つけていただくしかない」
この担当部署の担当の方は、私が知っている人で、話しやすい方だったので、さらに丁寧に協力者が見つからない状況を説明し、ルール変更を検討するならば、協力して検討することも伝えて、ルール変更を促すことにしました。
まとめ
- 組織の中で働いていると理不尽な仕事の振られ方をすることは、必ずある。
- 許容できる範囲であれば、つべこべ言わずに気軽に引き受ける。
- 許容できない範囲であれば、誠意をもって断る。
- 依頼元に文句や苦情は言わない方が良い(ただのクレームになる)
- 依頼元に理不尽であることを伝えるならば建設的に伝える。
組織には、様々な人が仕事をしているので、自分が理不尽と思っても、相手はそう思っていない場合があります。また理不尽と分かっていても、依頼せざるを得ないという状況もあります。
自分の時間的余裕と精神的余裕を考えて、図太く対応してはどうでしょうか。